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酔香、3年目への思い

29 5月 2012

酒庵酔香は、5月21日をもって開店2周年を迎えました。翌22日は東京スカイツリーのグランド
オープン。下町の静かな住宅街だった押上近辺にも人の波が押し寄せ、俄にざわめきを増して
きました。 当店の2周年記念と東京スカイツリーの開業記念に行った「角打スタンプラリー」は、
晴天にも恵まれ多くの方々にご参加いただきました。時間帯によってはお入りいただけなかった
方もいらっしゃったようで、お詫び申し上げるとともに遠くからもわざわざ足を運んでいただいた
方々に心より御礼申し上げます。

昨年の1周年記念は当店単独で角打スタイルのイベントを実施しましたが、今回「角打ワイン利三郎」
と「Fujisan Deli」の2店を巻き込んでスタンプラリーを企画したのには、ある思いがあります。
以前のブログにも書きましたが、開店当初は経営的に厳しいスタートになることを覚悟していました。
押上という世間的にはマイナーな駅からさらに10分近く歩いた先の、うらぶれたシャッター商店街の
中の立地で、日本酒というこれまたマイナーなドリンクを専門に扱う店…。まさに3重苦を克服せず
して生き残りはないと悲壮な思いを抱えていたのです。

実際には、わざわざ押上くんだりまで足を運んでいただく“奇特な”お客様のおかげで、何とか2年の
節目をクリアすることができました。その間、商売的には不毛の地だった押上にもポツポツと店が
出来始め、立地環境を共有するそれぞれの店が同志的な連帯感を持つようになってきたのです。
それは旧来からある商店街組合的なつながりではなく、もっと自由で軽やかな仲間意識とでも
いうべきものです。

先日、東京スカイツリーの足下にできた商業施設「東京ソラマチ」を見て来ました。以前、経済誌の
記者をやっていた頃、長く流通業界を担当していて多くの商業施設のオープンに立ち会ってきました。
その経験からまず、狭い敷地という制約の中で300店以上もの店舗をびっしりと詰め込んだパズルを
完成させた担当者の苦労に頭が下がる思いでした。まさに下町にふさわしい「長屋商店街」だなと
苦笑したものです。

その長屋に1日20万人を超える人々が押し寄せる様子は圧巻でした。スカイツリーという圧倒的な
キラーコンテンツを抱える商店街だけに、しばらくは混雑が続くでしょう。一方、スカイツリーの
開業前は賑わっていた近辺の店にあまり人の流れはありませんでした。いくら下町散策も面白いぞ
と言われても、出来立てホヤホヤでキラキラな魅力を放つ店を見せられれば、誰しもそちらを選んで
しまうのは道理のこと。「スカイツリーが出来れば周辺の店も賑わう」という安易な期待は抱かない
方が賢明でしょう。

とすれば、今ある店はお客様がわざわざ足を延ばしたくなる魅力を高めていかなければなりません。
圧倒的な個店力がある店なら単独でお客を呼べるでしょうが、そうでなければ地域ぐるみで誘引力を
磨いていく必要があります。その第一歩が今回のイベントだったのです。ほんのささいな試みだけに
まだまだパワー不足ですが、点と点が結ばれて線になり、さらに線が輻輳して面になっていけば、
新しい商業施設にも負けないパワーが発揮できるようになると信じています。

一方、1人でも多くのお客様が当店にお入りいただけるよう、イスを入れ替えて客席を2席だけ
増やしました。新しいイスは以前より少々座り心地が落ちますがご容赦ください。3年目を迎え、
より遊びに来たくなる街、より愛される店をを目指して頑張りますので、よろしくご愛顧のほど
お願いいたします。