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チャリティー日本酒会に参加して思うこと

このところ震災を受けた酒蔵を支援するためのチャリティーイベントが目白押しです。
昨日の日曜日も臨時休業をいただいて六本木まで出かけてきました。東北の酒蔵を
中心に90近くの日本酒蔵がブースを並べた会場は壮観でした。一方で全ての蔵元の
お酒を利いて回るのは大変。日本酒の他に焼酎やリキュール、国産ワインなども
出展していましたが、結局回りきれませんでした。

今後もこうしたイベントがいくつか予定されており、できるだけ足を運びたいと思って
いますが、1つ気になるのはこうした試みが被災した蔵だけでなく日本酒業界全体を
活性化させるのかどうかということです。「東北のお酒を応援しよう」というのは
半ばブーム化しており、普段パック酒くらいしか置いていないスーパーにもにわか
東北酒コーナーができるほど。よく見てみると、被害状況にかかわらず東北であれば
何でもありといった品揃えなのですが。

当店でも宮城県や岩手県、福島県をはじめ、青森県、茨城県、栃木県など被害の
大きかった地域のお酒を広く扱っております。そうした地域のお酒を飲んで支援
しようというお客様は多く、最初から最後まで被災地のお酒を飲んでいかれる方も
いらっしゃいます。ところがその一方で他の地域、特に関西以西のお酒の注文が減って
いるのです。

私は関西の大学を卒業し、最初に勤めた会社も関西だったこともあって、当店の
お酒の品揃えもできるだけ関西以西の知られざる銘酒を揃えてきました。その思いに
反して関西の酒が動かない。中国地方の知り合いの酒蔵は「震災前に比べて3割近く
売り上げが減った」と話します。震災を機に普段日本酒を飲まない人が飲むように
なれば業界全体に潤いが回るのでしょうが、今のところ「東高西低」の偏重が
目立ちます。

日本人は極端に流れがちだと批判するよりは、被災蔵を応援したいという純粋な
飲み手の気持ちは大事にしたいものです。ですが、経営が苦しい東北以外の蔵元が
立ち行かなくなるという“二次被害”を防ぐためには、業界全体でこれからの日本酒の
売り方やアピール方法を考えていかないとダメだと思うのです。

昨日の会で原発の風評被害に悩む福島県の蔵元がこう語っていました。
「日本酒は米と水でできていますから、原発の影響を最も受けやすい。今秋の
造りからが本当の正念場です」。被災地の蔵元でも一時的なイベントでは解決
できない長期的で深刻な影響がまだまだ懸念されます。

東も西もない。日本酒がこれから何十年、何百年単位で生き残っていけるのか、
明らかな転換点に立っていることを実感させられます。その場に立ち会っている
自分に何ができるのか、小さな日本酒バーの店主ではありますが、日々自問自答
しています。

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