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スカイツリー効果はありますか?

「東京スカイツリーが出来て、お客さんが増えましたか?」。最近、多くのお客様に尋ねられる
質問です。 正直なところ、あまり変化は見られません。特に平日の夜は、駅から遠い当店まで足を
延ばす方はほとんどいません。辛うじて土日の昼酒営業の時は「今、スカイツリーにいるんです
けど…」という電話がかかってきて、地方から観光目的で上京された方がちらほら来られるように
なりました。

スカイツリー周辺のお店の方に聞いても、「むしろツリー開業前の方が賑わってました」という
声が聞かれます。東京スカイツリータウンには約300ものショップが入っていて、水族館や
プラネタリウムなども揃っているとなれば、1日中その中で過ごす人たちが大半なわけです。
ツリー建築中こそ多くの見物客で周囲のお店がごったがえしていましたが、今はお土産屋さん
などが閉店に追い込まれています。スカイツリーを起爆剤にして、周囲の下町観光も一緒に
盛り上げていこうとする地元の思惑は、今のところ空振り気味のようです。

話は変わりますが、私が京都で学生時代を過ごしていた頃、バスガイドのアルバイトをしていました。
主に観光バスで移動する修学旅行生を引き連れて 、京都や奈良を中心とした寺社仏閣を巡りました。
約3カ月にわたる研修を受けてからバスに乗りますので、「清水寺の舞台の高さ」や『東寺の五重塔の
高さ』、「金閣寺に貼られている金箔の枚数」に至るまで、あらゆる観光名所はひととおり説明できる
だけの知識を持っていました。

春秋の観光シーズンになると、参道に土産物店がズラリと並ぶ清水坂界隈には観光客が殺到し、終日、
原宿の竹下通り並みの混雑ぶりでした。その中を多い時は十数台にも及ぶ修学旅行生のキャラバンを
引き連れて坂道を上っていくのは大変なことでしたが、一方でこれだけの観光客を全国から集められる
京都の底力に心底感服したのを覚えています。

しかし、時代は変わって京都は修学旅行の聖地ではなくなりました。修学旅行の行き先は海外が
当たり前になり、たまに京都が選ばれても観光バスでゾロゾロと集団行動するのではなく、グループ
ごとにタクシーで移動するという形態に変わりました。今や京都観光を支えているのは中高年の
女性グループだと聞きます。こうした時代の波を受け、私が所属していた学生ガイドの事務所も
最近ひっそりと閉鎖しました。

東京スカイツリーは、かつて私を驚嘆させた最盛期の京都の主要観光地を凌ぐ入場者数が見込まれて
います。それはそれで素晴しいことですが、未来永劫そうした繁栄が続く保証はありません。事実、
東京には次々と新しい観光スポットが登場し、その度にかつて賑わった施設は時代遅れとばかりに
記憶から忘れ去られていきます。「世界一」のキラーコンテンツを擁する東京スカイツリーも
決して例外ではありません。

それだけに、立地に頼るのではなく、常に店の魅力を磨きながら「個店力」を高めることこそが
大切だと気を引き締めています。厳しい残暑が続く中にも確実に秋の気配が強まってきました。
秋の「ひやおろし」を嚆矢に、ますます日本酒が美味しい季節の到来です。スカイツリーの雑踏に
疲れたら、しみじみと旨酒を味わいに来てください。そうしたゆったりとした時間を持って
いただけることこそが、スカイツリーには無い魅力を輝かせる道だと思っています。

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